a_sue’s diary

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『丹下左膳〔完全版〕』 小沢さとる マンガショップ

初出 週刊少年キング 1967年(昭和42年)35号〜1968年(昭和43年)14号
小沢さとるは「サブマリン707」以来のファンで、物心ついて以降の作品はほとんど読んでいるつもりだけど、これは多分読んでない。サンデーコミックスで出てたのは知ってるけど、貸本屋でも多分借りてないんだろうな。今回完全版で読んだが全く思い出せなかった。
さて、小沢さとると言えばメカの人というイメージだったのだけど、これを読んでそのイメージはひっくり返ってしまった。時期的には白土三平の作品や横山光輝の「伊賀の影丸」などはあったけど、劇画がメジャー誌に普通に乗り始める直前ぐらいだが、この作品の背景の書き込みの細かさはそれ以前のマンガのレベルを超えてるよなぁ。しっかりした時代考証を感じる細かな書き込みがすごい。メカの人だってのは思い込みで、理詰めの人なんだなぁ。
それはさておき、乾雲・坤竜という二振りの刀を巡るこの物語、すごく複雑で話がちゃんと理解できなかった。週刊連載で読み捨てられるのが当然の時代に何週も前の伏線を受ける展開があったり、最後は明らかに打ちきりという感じの終り方をしてるし。左膳の手元に来たのが乾雲で、あっちにあったのが坤竜だと思うのだけど、いつの間にか乾雲が手元からなくなってて、いきなり登場した第三者が持ってるし。どこか読み落としたのだろうか。
描写では刀で人を切るってことをきっちり描いてある。切られた相手は漠然と切られて倒れるのではなく、きっちり胴を切り裂かれていたり腕や脚を落とされたり、準主役キャラがはっきり首を落とされる描写もある。このあたりも理詰めの人だなぁ。
少年画報社って、マンガをたくさん出してる割に作品を大事にしない会社で、少年キングなんて、あの「サイボーグ009」が複雑すぎるって、人気絶頂と読者が思ってたときに打ち切ったような雑誌なのに、こんなのよく連載してたなぁとびっくり。いや、だからこの打ち切りなラストなのかな。
同時期の作品がなんなのか、調べないとなあ。
ともあれ、小沢さとるの知らなかった一面を見たこの作品は、新鮮で面白かった。

丹下左膳〔完全版〕 (マンガショップシリーズ 421)

丹下左膳〔完全版〕 (マンガショップシリーズ 421)