初出
夕凪の街 | WEEKLY漫画アクション | 2003年9月30日号 |
桜の国(一) | 漫画アクション | 2004年8月6日号 |
桜の国(二) | 描き下ろし |
ふと見ると99円だったのでポチッと。
大分前に話題になったとき、読んでみたいとは思ったが買う程でもないかなということでずっと保留にしてた本。当時、ショッピングセンターに入ってる本屋さんでお年を召したご婦人がこの本のことを聞いていて、マンガしかないってことで買わずに去って行かれたのを見て、いやこれ元からマンガですからと追いかけて言いたくなったりしたもんだった。
意外に短くて、そういや本も薄かったなと思ったが、中が「夕凪の街」と「桜の国」にわかれてて、別々の作品を1冊にまとめただけかと思ったら、共通の登場人物が出てきたりして、つながってる話だった。
「夕凪の街」の舞台は昭和30年の広島。被曝後10年たって原爆症を発症して亡くなっていく女性。原爆から生き残ったことを心の傷として抱えている。一度自分にむけられた悪意が忘れられないってあるよね。なんの心配もなくのほほんと暮らしてたのが、突然NGを突きつけられて、その後いつもそういう不安を抱えて生きていくとか。それが原爆投下ってのは、自分に何の非もないのに、自分を殺そうとした人がいて、周囲のみんなが死んだ中で自分は生き残ってしまったという罪悪感。
そんな哀しい心を淡々と描いてて、悲しい話だった。
「桜の国(一)」は昭和62年の東京都中野区を舞台にしてる。この段階では「夕凪の街」とのつながりは見えないのだけど、平成16年を舞台にした「桜の国(二)」で、お父さんの話が出てきた時に「夕凪の街」とのつながりに気付く。
お父さんの思い出とか、今も広島の人たちがどこかに抱えていることとか。
僕らの年代だと広島に行ったことがなくても小学生のころ原爆展が来たりして、いろいろ知る機会があった。それこそ「はだしのゲン」がリアルタイムだし。今の若い人だと、「はだしのゲン」の騒動があって初めて知るぐらいかもしれないな。
そういう意味で、こういう静かな物語の中で淡々と描かれる被曝というのは知る機会を与えるという意味で良いのかも。
- 作者: こうの史代
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2012/09/07
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