a_sue’s diary

a_sue の日記 はてなブログ版

『天使の王国―「おたく」の倫理のために』 浅羽通明 JICC出版局

初出

1章 湾岸戦争」というステイタス・シンボル 書き下ろし
2章 現代思想」というサクラメント 別冊宝島110『80年代の正体!』1990年3月
3章 〈全自動カメラ〉複製技術時代の心霊写真 別冊宝島92『うわさの本』1989年3月
4章 〈伝言ダイヤル〉音声のイミテイション・パラダイス 『「伝言ダイヤル」の魔力』1989年3月
5章 〈コンビニエンス・ストア〉灯り続ける商品の不夜城 別冊宝島110『80年代の正体!』1990年3月
6章 〈平成改元〉うわさが宿した千年王国 別冊宝島92『うわさの本』1989年3月
7章 少女前世伝説―転生、戦士への覚醒 別冊宝島92『うわさの本』1989年3月
8章 富沢雅彦の生涯―ラディカルな逃避者の蹉跌 別冊宝島104『オタクの本』1989年11月
9章 「オタク」という現象―その社会的起源 別冊宝島104『オタクの本』1989年11月

初出には掲載時のタイトルも載ってたんだけど、長くなりすぎるのでそこは省略。

著者の名前も知らなかったのだが、きっかけはこの本。
a-sue.hatenablog.com
読みたかったのは8章の「富沢雅彦の生涯」だけなのでそれだけ読むという手もあったが、せっかくなので頭から読んだら結構面白いので全部読んだ。
初出情報でわかるとおり、1990年頃に書かれた文章をまとめた本。30年前か。
当時の雰囲気を思い出しながら読んだが、どの記事も分析が興味深い。

「富沢雅彦の生涯」では、人となりがよくわかった。プロと同人誌の狭間で無理をして体調を崩し亡くなった、という感じかなぁ。

ひろいものだったのは、9章の「オタク」という現象。
おたくの成り立ちと特質などについての分析が、これまで読んだことがないものだった。って、30年前に書籍になってるんだから僕の不勉強なのだが。
『消費と流通』86年春号掲載の論文で80年代の若者を四種に分類してると紹介されていて、下記の通り。
(1) ニュースタンダード派 推定構成比 60%
(2) 感的知性派 推定構成比 20%
(3) ゲームズマン派 推定構成比 15%
(4) 内的モラトリアム派 推定構成比 5%
30年後の現在、おたくのイメージは明らかに (4) だと思うが、ここでもおたくは (4) と重なるが、(2) もあわせて未分化なおたくだったのだと語っている。
僕は自覚的に第一世代のおたくだけど、明らかに (2) に属すると思う。最近のオタクに感じる違和感はこれだったのか。

この本を読んだ限りでは、この著者はオタクカルチャーの外側にいて時代を見てる印象。
でもウィキペディアによれば第一世代オタクだと書かれている。
だから「インド人が来た」の適切な引用と解説が出来たのかと納得。
すなおに勉強になった。

これを買った時には気付かなかったけど、文庫が出てたのね。
目次を見るとちょっと構成が変ってるようだけど、kindleもあるからこっちを買えば良かったな。著者にも行くし。