a_sue’s diary

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『不確定世界の探偵物語』 鏡明 創元SF文庫 東京創元社

あの鏡明の小説だから読まなくては。というわけで買った本。割り込みがたくさん入って、おまけに朝の通勤電車で読んでたら気分がどんよりしてきて思わず閉じてしまったりして思いの外時間がかかってしまった。しかし、最後の3話ぐらいは引き込まれてしまって、読後感はなかなか良いですよ。
時間ものと言えば時間もの、多元宇宙ものという方がいいのかも知れないけど、これまでの時間ものの範疇には入らない。というと笑われてしまうぞ、というのはこれが書かれたのが25年前だからだ。僕が知らなかっただけで、この話は25年前から存在していたのだ。う〜む。
時間ものの仕掛けをバックグラウンドに起きながら、どちらかというと探偵ものの雰囲気が強い作品である上に、中盤の作品は時間ものである必要もないような内容だったりして、そういう話が書きたかっただけなのか?と思ったこともあったが、まあこれは最後きれいに収まっていることよ。
おもしろかった。
鏡明という名前に初めて触れたのは、平井和正が中一時代に連載した「超革命的中学生集団」であった。なんと幸運なことに、僕の学年はそのリアルタイムな読者なのだ。あの作品は、小説にフェラーリとかロールスロイスとか、そういう具体的な名前が出てきてもいいのだと初めて教えてくれた作品だったのだから。(実はそれより前に夏目漱石の「二百十日」でヱビスビールが登場してるのを読んでいるのだが、子供だったのでわからなかったのである)
で、鏡明である。アトラス鏡である。いや〜、これが実在の人物だったとは。大藪春彦の本の解説で名前を見て、おお!と思ったのが先だったか、平井和正の一連の後書きとかその他エッセイで読んだのが先だったか思い出せないが、大藪春彦評論家として名前を意識したのは間違いない。今回の解説ではそこに触れられてなかったのがちょっと残念である。
いや、それはさておき。鏡明の作品を読み、その人となりについて知ることができたのは良かった。作品もおもしろかった。

不確定世界の探偵物語 (創元SF文庫)

不確定世界の探偵物語 (創元SF文庫)