a_sue’s diary

a_sue の日記 はてなブログ版

読了『【電子版限定特典付】 少年の名はジルベール (小学館文庫) Kindle版』 竹宮恵子 小学館

買ったのはここ。
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一気読み。
さらに萩尾先生の本も再読。

まあ、一つ屋根の下に個性のある創作家が2人はダメという、編集者の山本順也さんや木原敏江先生の言葉が正しかったという事か。
大泉の頃、お互いに自分とくらべて相手の方が才能があって順調にやってるように見えてるという構図は同じなんだけど、それに対する反応には個性が出る。
身近な才能に嫉妬し、焦り、もがく竹宮先生は、自伝を紙で読んだ頃言われてた様に「アオイホノオ」の世界なんだけど、萩尾先生はそういう嫉妬という感情を現在も理解できないと書いてるけどおっとりとしてあまり感じてなくて、自分は自分が出来ることをやるしかないと淡々とマイペース。
大泉を解散して逃げ出す竹宮先生に対し、あまり感じてない萩尾先生が近くに新居を決めてしまって、ある種パニックになった竹宮先生がハッキリした行動に出てしまう。
一方の萩尾先生は、竹宮先生の行動に対して自省モードで身体がパニックを起こして体調を崩し、完全撤退して以後関係を絶ってしまう。

竹宮先生の自伝では、大泉解散以後「萩尾さん」に関する記述が一切なくなってしまうのに対して、萩尾先生の本はその先の事情を説明するのが主目的であるためその後のいろんな出来事が語られる。
萩尾先生の本には現在も萩尾先生のそばに居る城章子さんの文章も載ってて、やや外から見た状況説明になってるが、いろいろあったらしいことがわかる。

あらためて2冊を再読した上で、5/10のアトロクで吉田豪さんが言ってた、竹宮先生の本は萩尾先生に対する謝罪じゃないのかというのはちょっと違う気がした。
あの時私はこんなに苦しかったと言い訳してるだけで、謝罪してるようには読めなかった。

『萩尾望都と竹宮惠子 大泉サロンの少女マンガ革命』の著者中川右介さんが執筆時に増山法恵さんにインタビューしたらしい記述があるのだけど、萩尾先生の本を踏まえて増山法恵さんの話を聞きたいなぁ。
でもそれはしょせん外野の野次馬の興味本位にしか過ぎないので、過去はそっとしておくのが一番なのかも。

「精霊狩り」シリーズとか「キャベツ畑の遺産相続人」とか、萩尾先生には大泉時代の楽しい思い出的な作品があるが、以後「精霊狩り」シリーズの続編が描かれなくなってしまったのはファンとして残念。
何度も書いてる気がするけど、フラワーコミックス「ポーの一族」全3巻の時代に読み始めた人間としては、この時点でまさかこんな人間関係になってたとは夢想だにしなかったなぁ。

あ、萩尾先生の本に下記フレーズがあるけど、

コメディ も ギャグ も センス が 要る。 その センス が 自分 に ある とは 思え ない。

萩尾望都. 一度きりの大泉の話 (Kindle の位置No.2137). 河出書房新社. Kindle 版.

少なくとも「この()うります」あたりまでのコメディ作品のセンスはぶっ飛んでて爆笑したもんです。
それ以降コメディ作品がほとんどなくなってしまったのはちょっと残念。
と、書き添えておこう。