a_sue’s diary

a_sue の日記 はてなブログ版

『僕らが愛した手塚治虫』 二階堂黎人 小学館

しばらく前から気にはなっていたが、買えないので中を見ないようにしていた本。

買える状況になったので中をぱらぱらと見て、ピンポイントではまる話があって即レジへ。

で、持ち歩かなかったので1週間かかって読了。

雑誌掲載時の図版がたくさんあって、おもしろかった。

著者は1959年東京の生まれで、個人的な経験についての話がたっぷりあって、地方と東京の違いはあるが同じような時期を生きてきたので、あったあった的なところがいろいろ。

いきなりだけど、P.25にある1965年の〈ロボイドの巻〉と同時期に連載されていた「鉄人28号」の話。〈ファイヤ三世の巻〉のはずなのにかすかに覚えているのは〈VL2号の巻〉の方だと書いてあるが、記憶が正しくて知識が間違っている。〈ファイヤ三世の巻〉はその1年前の作品で、同時期の「鉄腕アトム」は〈地球最後の日の巻〉だ。〈ロボイドの巻〉のころは〈VL2号の巻〉で正解。ちなみにその間に〈地上最大のロボットの巻〉と〈砂漠の怪ロボットの巻〉がある。多分雑誌に掲載されたころからたくさん指摘されただろうけど、注も入ってないな。

手塚治虫が単行本が出るたびに手を入れる話は有名だが、この本にはその実例がたくさん載ってて興味深い。

実はピンポイントでヒットした件というのが、P.309からの「ビッグX」の書き換えの件。「少年ブック」の10月号を買ってもらい、11月号からは貸本で読んでいるのだけど、9月号は読んでいない。で、翌年の春ぐらいだと思うけど総集編の増刊号で多分8月号分だと思うけど、クモスーツの女に捕まりそうになるシーンまで読んでいて、ちょうどそのあとがミッシングリンクになっている。

サンデーコミックスで捕まりかけたとこのあとがやっと読めたと思ったのもつかの間、3巻のラストの薬が切れたとこが明らかに書きなおした絵で続いてて、4巻になったらいきなり日本に戻ってる。それはないでしょう。記憶にあるクモタンクで脱出するシーンも何もなくなってて、10月号分も11月号分もいじられまくり。以来ずっと気にかかっていた。

ここでそのあたりの話が紹介されていて、読んでるはずなのに覚えてなかった泳ぐシーンを含め、いろいろわかったのがありがたかった。

手塚治虫が本が出るたびに手を入れる件については、原稿というのが素材に過ぎず、印刷される媒体に合わせて調整するのはある程度ありだなと最近思うようになった。

それでもエピソード単位で削ったりするのはちょっとやりすぎで、前述の「ビッグX」の件などは、話がつながってないのだから勘弁してほしいわ。

ご本人もなくなったことだし、このへんでそろそろ「初出復刻版」シリーズでも出てくれないだろうか。